現在、個人事業主の方で、法人成りを検討している方のために、どういった観点で法人成りを検討したらよいか、まとめてみました。
1.取引上の信用性の観点から
個人事業主がよいのか、法人として事業を行った方がよいかは、得意先や販売相手、仕入先に対して、どちらが、円滑に取引ができるか、を考えるべきです。
まず、販売先が会社なのであれば、法人にされたほうがよいと言えます。
なぜなら、BtoBの取引においては、法人の取引相手は、ほとんどの場合、個人事業主ではなく法人だからです。
(また、仕入先についても、一般個人が行わないような特殊な仕入や、大口の仕入の場合は、やはり法人でないと取引ができないというケースも考えられます。)
また、販売相手が一般個人の場合で、自社の事業形態が個人事業主でも法人でも営業を行う上で違いがないのであれば、どちらでもよいということになります。
一方で、販売相手の個人が購入するかを検討する際に、事業者の信用性も考慮するような場合は、法人の方が望ましいでしょう。
2.人材確保の際の信用性の問題
事業を行う上で、外部から複数の人材を雇用する必要がある場合は、個人事業主よりも法人の方がよいと言えます。
なぜなら、求人を出した時に、求職者はより信頼性の高い職場を求めるからです。個人事業主として求人を出しても、思うように応募が得られないという状況にもなりかねません。
3.消費税の課税事業者に該当するようになる場合
例えば、すでに消費税の課税事業者になっている、あるいは課税売上が1,000万円をある時点で超えて、間もなく、消費税課税事業者に
なろうとしている場合、法人成りを検討されてもよいかもしれません。
法人成りすることによって、また消費税の免税事業者として事業を行うことができるからです。しかし、3期目からは、課税事業者になるため、効果はあくまで一時的なものです。
4.創業融資を受ける場合
日本政策金融公庫から創業融資を受ける際は、法人か、個人事業主かで大きく違います。
公庫の創業融資は、「無担保」「無保証」で融資が受けられる融資制度です。
これは、法人として融資を受けた際に、「連帯保証人」を立てる必要がない、ということであり、もし事業の存続が難しくなり、返済ができない状況になってしまった場合でも、個人に責任が及ばない、ということを意味します。
一方で、個人事業主として融資を受けた際は、法人の場合と違って、責任を免れるということはありません。
法人にしたときのコストについて
このように事業運営上メリットが大きい法人ですが、法人の方がコストは高くつくことになります。
メリットとコスト両面を考えた上で、検討しましょう。
かかってしまうコストの例
- 税務申告が複雑。外注した場合は、税理士報酬がかかる。
- 給与を払う場合は社会保険に加入しなければならない。
- 赤字決算でも、均等割という税金がかかる。
法人成りする場合、株式会社、合同会社のどちらにすべきか。
法人化する場合で、営利を追求する事業であれば、通常、株式会社または合同会社といった法人格を選択することになります。では、どちらの法人格を選択すべきでしょうか。
合同会社と株式会社の本質的な違い
合同会社と株式会社は、出資者、経営者の位置づけにおいて大きな違いがあります。
株式会社が不特定多数から出資を募り、また、出資者と経営する者が別々であることを想定しているのに対して、合同会社は、出資者と経営者が同一であることを前提とした法人格である、という違いがあります。
その他の具体的な相違点
設立費用は、株式会社が25万円程度かかるのに対して、合同会社は、10万円程度しかかからず、リーズナブルに設立ができます。
また、合同会社は株式会社にくらべて手続上も簡単だという違いがあります。
株式会社における役員は任期がありますので、一定期間がたつと選任と登記をしなおさなければならないのに対して、合同会社にはその必要がありません。
また、株式会社は毎年「決算公告」を行わなければなりませんが、合同会社は不要です。
どう判断すればよいか。
事業を行うにあたって、「株式会社」と名乗った場合と、「合同会社」と名乗った場合とで、どちらが有利に働くかということは考慮すべき点です。
どちらでも同じということであれば、あとは好みの問題になってきます。
1人または限られた少人数で出資し、経営するのであれば、合同会社でも問題ありません。あるいは、出資だけしたいというメンバーがいた場合は、株式会社という選択肢をとることになります。
まとめ
さて、法人成りすべきかどうか、検討する上でのヒントになったでしょうか。
また、実際に相談してアドバイスを受けたいという方は、お気軽にご連絡下さい。