本店の所在地とは、会社設立の際に、必ず定めなければならない事項です。
この本店所在地を決めるにあたって、押さえておくべきポイントを解説します。
本店とは?
いわゆる会社の本拠地の事であり、個人で例えるなら住民票住所のようなものです。
住民票住所が1つしかないように、本店も1カ所しか登記することができません。
(他の営業拠点を登記する場合は支店登記という形になります。)
なお、この本店所在地は、必ず、「主たる営業場所」を指定しなければならないということもなく、本店所在地と主たる営業場所を別に置くケースもあります。
本店所在地を決める際の注意点
それでは、本店所在地の決める際にどのような注意点があるのでしょうか。
実は、本店所在地の決め方によっては、後から問題になってしまうこともあるのです。そのようなことにならないよう、しっかりと確認していきましょう。
注意点その1:許認可申請をする場合
あなたが起業するその事業は、許認可が必要でしょうか。
許認可の中には、事務所に対して広さや設備などの要件が決まっているものがあります(例えば人材紹介業など)。
さらに、このとき事務所は賃貸物件にしようとしていて、要件を十分に確認しないまま契約してしまうと、万が一要件を満たしていなかった場合に、時間的にも経済的にも大きな損失となってしまいます。
ですので、事務所の契約の前には、許認可のための要件を満たしているか、十分に確認を行うことをお勧めします。
注意点その2:自宅を事務所にしたいとき
自宅が賃貸物件で、その自宅で登記をしようとしているなら注意が必要です。
というのも、賃貸物件によっては、契約上事務所として使うことを認めていないケースがあり、あとから部屋を会社の住所として使っていることが発覚すると、物件のオーナーとの間でトラブルになってしまうからです。
ですので、賃貸物件の自宅での起業を検討している場合は、事前にオーナーさんに事務所として使用してもよいかどうか、確認されることをお勧めします。
注意点その3:バーチャルオフィスを使うとき
バーチャルオフィスとは、比較的安価に場所を使うことができ、また、そこの住所を使って登記ができたりするスペースのことです。
ただ、法人口座開設を検討されている場合は注意が必要です。バーチャルオフィスで起業した一部のお客様の中で口座が作れないというケースが見られるからです。
もしバーチャルオフィスで登記をしたいが、口座開設が心配だという方は、口座開設の前に、ホームページや、パンフレット、業務委託契約書等、事業の実態を示す資料を十分に準備されることをお勧めします。
本店所在地の表記について
さて、本店所在地を登記する際に、住所の表記方法は以下のとおり何通りかあります。
- 東京都××区×××丁目×番×号
- 東京都××区×××丁目×番×号××ビル
- 東京都××区×××丁目×番×号××ビル×××号室
- 東京都××区×××丁目×番×号-×××号室
あまり違いはありませんが、例えば、部屋番号を含めて登記しなかった場合は、同じ建物内で別の部屋に移動した場合でも登記変更が必要ない、等の違いがあります。
既存の会社がどのような本店所在地の表記をしているかについては、国税庁の「国税庁法人番号公表サイト」などでも確認できますので、ぜひ参考にしてみてください。
登記申請の際の注意点
(1) 申請先の窓口
登記申請を行う際は、登記申請先は、通常、本店所在地のある都道府県の本局になります。
ただし、東京都や神奈川県等一部の都道府県については、本店所在地によって、登記申請先が異なってきますのでご注意ください。
例えば、神奈川県の場合は、横浜市、川崎市については横浜地方法務局。それ以外の市区町村の場合は湘南支局となっており、東京都の管轄は、本局と22の出張所に割り振られています。
(2)定款での記載や登記申請書類の準備
本店所在地は、定款に記載しますが、このとき定款へ記載する文言を市区町村までにとどめることもできます。具体的には、書類の記載方法は以下のとおりになります。
①定款に登記する住所をそのまま記載する場合。
定款の他には本店所在地を決定するための書類は必要ありません。
②定款に「東京都XX区」などのように市区町村までを記載する場合。
定款では本店所在地の詳細を定めていないので、登記申請時に本店所在地を決定する書類を添付します。
(例:発起人決定書、発起人会議事録、本店所在地決定書等)
上記の2つの方法には、同一市区町村内で本店所在地を変更する場合に、A.は定款を変更しなければならないのに対し、B.では定款の変更が不要という違いがあり、どちらかというと、B.の方法をお勧めします。
会社設立後に本店を移転した際の手続について
本店を移転したときは、変更登記と、税務署への届出が必要になります。
変更登記については、登録免許税と司法書士報酬がかかり、全部で6~10万円くらいのコストになります。
この登録免許税は、管轄の法務局が変わるような移転の場合は6万円、同一区域内での移転の場合は3万円と、税金の額が変わります。
また、社会保険、雇用保険に加入している場合は、事業所関係変更届、雇用保険事業主事業所各種変更届、労働保険名称、所在地等変更届等、様々な手続を伴うことになります。
まとめ
さて、ここまで本店所在地について解説してきました。
本店所在地は、登記だけでなく、許認可や口座開設など様々なところに影響があります。また、変更の登記も費用がかかるものなので、手続きを進めていく際は、より正しい知識で慎重に進めていくことをお勧めいたします。