就業形態には、社員や契約社員など自社での直接雇用のほかに、社外のリソースを活用する「派遣」や「請負」という方法があり、どちらも皆さんからすると「社外」の人間です。
どう違うのか、基本をおさえて効率の良い事業拡大を目指しましょう。
派遣や請負はなくなっても良い?
昨今では正規雇用はマルで、非正規雇用はバツというような風潮が見受けられますが、一概には言えません。
例えばシステム構築や総務関係の手続きなどの煩雑で専門性が必要な業務はゼロから育成するとたいへん時間がかかってしまいますが、専門知識や技術を持っている人材に任せてシステムを構築したり、即戦力の人材にイレギュラーな稼働に対応してもらうことで、部下の負荷を軽減できたりします。
また、技術を提供する側も自分の高い技術を思う存分に発揮することが可能になります。
派遣と請負の違い~契約について~
派遣就業契約は就業先(以下、派遣先)と就業する個人(以下、派遣者)とが、人材派遣会社(以下、派遣元)を介して就業契約を締結します。
かつて派遣業務は通訳や添乗など、専門性が非常に高い業務に限られていましたが、現在では事務や販売など広範囲に広がり、派遣先企業への直接雇用を前提とした派遣契約も増えてきています。
また、契約業務の内容に依らず、3年を超えて同一組織内で同一の派遣者を受け入れる場合は労働組合などの意見を聞く必要があります。
対して、「請負」は特定の業務をある企業(団体)へ委託する契約です。受託した企業(団体)はその業務に応じて必要な人材を集めてチームを作って臨みます。
よって、受託した側は請負責任者と作業者という組織になり、一人の場合は責任者兼作業者となります。保守業務や工事など以前からある契約形態ですが、最近では受付業務などを一括してアウトソーシングする請負契約も増えています。
派遣と請負の違い~日々の業務について~
派遣就業では、日々の業務は派遣先の責任者や指示者から派遣者へ直接行い、報告や相談も直接行いますが、契約の更新や変更の相談や手続きは派遣元を介して行います。
業務は派遣先部署のメンバーの一人として就業することが多く、外からは区別がつかないことが多いです。
対して、請負業務のやり取りはあらかじめ定められた責任者間で行う必要があり、作業者に直接指示をすることや、従業員が直接受託先のスタッフへ業務の相談をすることなども行ってはいけません。
これらを守るために同一建物内で業務を行う場合は専用の部屋を設けたり、パーテーションを設置したりするなど、物理的に業務スペースを分離する対策をとることが有効です。
また、委託先は別企業(団体)であるため、セキュリティ学習など、自社のルールを押し付けることはできません。
まとめ~どちらが適切か迷ったとき~
派遣と請負、どちらに該当するのかは契約書ではなく、あくまでも「業務の実態」で判断されるという点に注意が必要です。
慎重に判断して適切に事業を運営していくことは当然なのですが、もしどちらに適しているのか迷ってしまう場合や、いろいろな疑問が生じた場合は、各都道府県労働局で相談窓口が設けられていますし、適正な運営に関するパンフレットも配布されています。
また、労務管理のコンサルティング業務を行っている社会保険労務士(社労士)に相談するのも良いでしょう。
【参照】
● 厚生労働省
労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準(37号告示)関係疑義応答集
● 厚生労働省
「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準」
(昭和61年労働省告示第37号)(最終改正 平成24年厚生労働省告示第518号)
● 厚生労働省・都道府県労働局
「労働者派遣・請負を適正に行うためのガイド」
● 内閣府・公共サービス改革推進室
「地方公共団体の適正な請負(委託)事業推進のための手引き」(平成26年3月一部改訂)