企業が取引を行う場合、必ず必要になるのが法人口座です。
法人口座とひとくちに言っても、それぞれ特徴があるので自社に合った金融機関・銀行を選びましょう。
また少しの現金と免許証などの本人確認書類等を揃えることで開設できる一般口座(個人向け口座)と異なり、思いのほか法人口座開設の準備は大変なものです。
事前に手続きの流れを確認し、スムーズに開設ができるようにしていきましょう。
法人口座はどこで開設すればよいのでしょうか?
法人口座を開こうとしても、様々な種類の金融機関があり、どこで開設すればいいのか迷うかもしれません。
ここでは各金融機関の特徴を押さえていきます。
都市銀行(としぎんこう、略称:都銀(とぎん))
普通銀行のうち、大都市に本店を構え、広域展開している銀行のことです。大企業、中小企業、個人等と幅広く取引しており、国際業務や投資業務等も行っています。
都市銀行の定義に明確な法的根拠はありませんが、慣例的に2006年以降は以下の5行に限定されています。
- ● みずほ銀行(銀行コード:0001) 本社:東京都千代田区
- ● 三菱東京UFJ銀行(銀行コード:0005) 本社:東京都千代田区
- ● 三井住友銀行(銀行コード:0009) 本社:東京都千代田区
- ● りそな銀行(銀行コード:0010) 本社:大阪府大阪市
- ● 埼玉りそな銀行(銀行コード:0017) 本社:埼玉県さいたま市
- ※ 埼玉りそな銀行は都市銀行に含めないことがあります
- ※ ゆうちょ銀行は郵便貯金を出自とする特殊性から都市銀行には含めません
地方銀行(ちほうぎんこう、略称:地銀(ちぎん))
地方銀行とは、一般社団法人全国地方銀行協会の会員である銀行で、第一地方銀行と呼ばれることもあります。
地方銀行は各都道府県に本店を構え、各地を中心に支店を展開しています。都市銀行と比べると小口の取引をメインとしますが、地元の中小企業や個人との取引量が大きいことから地域経済への影響力は大きいです。
ネット銀行
ネット銀行とは、必要最小限の店舗のみを有し、インターネット等を介した取引を中心としている銀行のことです。
店舗やATMなどが少なく、預金通帳も発行しないことから人件費や固定費を抑えることができ、その結果、手数料が安かったり、預金金利を高く設定したりしているところが多いです。
各種インターネットサービスとの連携を強めている銀行も多く、業務上インターネットサービスを多く活用する場合は、利用を検討してみるとよいでしょう。
信用金庫(しんようきんこ、略称:信金(しんきん))
信用金庫とは、地域の会員の出資によって地域の繁栄を図る相互扶助を目的とした協同組織の金融機関のことです。主要顧客はその地域の中小企業や個人です。
信用金庫は利益第一主義ではなく地域社会の利益が優先される組織です。また営業地域は一定の地域に限定されており、預金はその地域の発展に活かされている点が銀行と大きく違う点です。
2016年3月時点で全国に約270の信用金庫が存在します。
信用組合(しんようくみあい、略称:信組(しんくみ))
信用組合とは、信用金庫と同じく組合員の出資による共同組織の法人ですが、根拠法や組合員資格が信用金庫とは異なります。預金の預け入れも信用組合は原則として組合員が対象となります。組合員となるためには営業地域内の在住者や在勤者でないといけません。
どの金融機関を選べばよいのか?
都市銀行、地方銀行を選ぶメリットは、まずはその営業範囲の広さでしょう。店舗やATMの数、ネットバンキングの展開など利便性は銀行のほうが上回ります。また大手銀行と取引が出来る、ということが企業の信用にも直結します。
一方で信用金庫、信用組合は地域の繁栄を図る相互扶助を目的としているため、地域社会の利益を優先してくれる点がメリットでしょう。
中小企業の場合、設立当初から多額の融資を受けることはあまりないので、会社の経営状態以外の事も考慮してくれることが多い信用金庫や信用組合に口座を開設することを検討してもよいでしょう。
銀行口座の種類にはどのようなものがある?
法人が使用する主な銀行口座の種類は以下のとおりです。
普通預金口座
銀行取引の基本となる預金で、お金の預け入れ、払い戻しが自由にできる利便性の高い口座です。公共料金や家賃などの自動支払い等にも使うことができます。
通常は利息がつきます。預金保険制度の対象となる口座です。
当座預金口座
手形や小切手の支払いに使われる預金口座です。通帳は発行されず、毎月当座預金照合表が送られてきます。
法律により利息はつきませんが、預金保険制度によって全額が保護される口座です。
法人口座開設を断られる理由は?
法人口座の開設を断られる理由は、主に次の3点です。
資本金が少なすぎる
設立登記は資本金1円でもできますが、資本金が少なすぎると審査が通らない可能性が高くなるようです。
審査基準は各金融機関によって異なりますが、事業が円滑に運営できる程度の資本金は準備したほうがよいでしょう。
※資本金の決め方はコチラを参考にしてください⇒資本金はどのように決めればいい?
バーチャルオフィスを使っている
バーチャルオフィスを使っている場合、事務所の実態がないと判断され口座開設が出来ないことが多いようです。
審査の際に固定電話の有無を確認されたり、賃貸借契約書の提示を求められたりすることもあります。
バーチャルオフィスを契約する場合は、自宅を本店登記し、自宅の最寄りの銀行に口座開設をしたほうがスムーズでしょう。
事業内容や事業目的が不明瞭、もしくは、不適切
定款に事業目的を多く記載しすぎると、一体何の仕事をするのだろうか?と金融機関の担当者に不信感を与えてしまいます。
そのため、口座開設前に事業の実態を証明できる資料を用意しておくとよいでしょう。会社のホームページや顧客との契約書、サービス説明資料などがあればベターです。
また、風俗関係など金融機関が怪しむような事業目的が記載されていると、審査が通らない可能性もあります。
法人口座開設の準備
スムーズに法人口座開設を進めるため、下記の準備を行いましょう。
なお口座を開設する支店は原則として「会社の本店の最寄りの支店」となります。
書類の準備
法人口座開設には次の資料が必要です。各金融機関によって異なる可能性もありますので、開設を希望する金融機関に事前に確認をとるとよいでしょう。
- ● 履歴全部事項証明書(登記簿謄本)
- ● 認証を受けた定款
- ● 法務局へ届け出た代表印
- ● 印鑑証明書
- ● 銀行員に使用する印鑑
- ● 窓口に行く本人の身分証明書
- ※ 代理人が行く場合には法人との関係を示す資料
- ※ 会社の事業の実態を証明できる資料もあると良いでしょう
印鑑について
「会社の印鑑を作ろう!」の記事でも述べましたが、代表印とは別に銀行印を作りましょう。
銀行印は財務・経理の担当者が使うことが多いため、安全性と利便性の観点から代表者印とは分けておくのが望ましいです。代表者印よりも少し小さめの丸印がよく使われます。
それではいよいよ法人口座を開設しましょう!
各種書類と印鑑の準備が整ったら、いよいよ法人口座の開設です。会社の本店の最寄りの支店で開設の手続きを行いましょう。
銀行では「口座開設依頼書」を記入します。「口座開設依頼書」には事業内容や株主について記載します。25%超の株を持っている株主がいる場合は、その人の氏名、住所、生年月日等も聞かれますので、事前に確認をとっておくとよいでしょう。
その後、記入した「口座開設依頼書」をもとに窓口の担当者と話をします。質問される内容は事業内容や入金の見込みについて等です。
以下のような点に注意をして対応すると、スムーズに進むでしょう。
きちんとした服装で行きましょう
誠実さが伝わるよう、きちんとした失礼のない服装で訪問しましょう。
名刺も持参してください
会社の顔となる名刺は、会社の信用を形作る大事な一部ですので名刺は忘れないようにしましょう。
名刺に記載する電話番号は携帯電話番号ではなく、固定電話の番号としてください。
業務内容をきちんと説明できるようにしておきましょう
起業直後で実際の取引がまだ発生していない場合でも、事業内容、事業目的をしっかりと伝えられるよう整理しておきましょう。