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クラウドソーシングは中小企業の強い味方! Web/IT/2016.05.23

クラウドソーシングという言葉の認知が日本でもかなり進んできました。大手企業の活用事例も増えていますし、実際にこれまでの業務で活用したことがある人も多いのではないでしょうか?

この「クラウドソーシング」、上手く使えば中小企業にとってとても強い味方になります。しかし、適切な使い方をしないと、発注者も受注者も不幸な結果になってしまう可能性もあります。

ここではクラウドソーシングへの理解を深め、効果的な活用方法について考えてみたいと思います。

そもそも「クラウドソーシング」とは何のことでしょう?

クラウドソーシングのクラウドは「群衆(Crowd)」を意味します。IT関連でよく言われる「クラウド」は「クラウドコンピューティング」のことで、こちらのクラウドは「雲(Cloud)」を意味します。

「群衆の知恵」を集めて、価値を構築することを「集合知」と言います。Wikipedia、価格.com、クックパッド、@Cosmeなどが集合知の成功例と言えるでしょう。

集合知は英語で「Wisdom of Crowd(群衆の知恵)」と言い、このCrowdと外部委託を意味するアウトソーシング(outsourcing)のSourcingが組み合わさったものが、クラウドソーシングの語源で、企業がインターネットを活用して、社内業務をインターネット上で繋がる群衆(Crowd)にアウトソースすることをクラウドソーシング、と言います。

「クラウドソーシング」ではどのようなことが出来るのか?

クラウドソーシングの発祥は1990年代後半のアメリカと言われています。

アメリカではデータ入力などの単純作業から、ウェブデザインやプログラミングなどのIT関連の仕事、その他にも商品企画や研究開発(R&D)などの高度な専門的な仕事まで、様々な領域でクラウドソーシングが利用されています。

それでは、日本ではどのような仕事で活用されているのでしょうか?

サイトを分類してみると・・・

クラウドソーシングのサイトを分類してみると、

  • ● 様々な領域の仕事のやり取りができる「総合型」のサイト(ランサーズやクラウドワークスなどが有名です)
  • ● データ入力などの軽い作業に特化したサイト
  • ● デザイナーやエンジニア・テスター向けのサイト
  • ● アイデア募集のサイト
  • ● 翻訳者・声優・コンサルタント・大学生・建築家など有資格者やスペシャリスト向けのサイト

等があります。他にも面白いところでは「家事代行」に特化したサイト、などがあります。

実際の仕事内容

それでは、もう少し実際の仕事内容を詳しく見てみます。総合型のサイトを例にとると、以下のような領域で仕事のやりとりをすることができます。

仕事の分類(参考:ランサーズ)
  • ● システム開発・運用・・・Webシステムやスマホアプリの開発~運用等
  • ● Web制作・Webデザイン・・・PC、スマホのサイト制作やECサイト制作、Webマーケティング、運用保守等
  • ● デザイン制作・・・ロゴやイラスト、印刷物・DTP、POP、看板、CD等
  • ● ライティング・ネーミング・・・記事作成、インタビュー、ネーミング、資料やマニュアルの作成等
  • ● タスク・作業・・・データ収集・登録、入力作業、キーパンチ、テープ起こし、軽作業の代行等
  • ● マルチメディア・・・動画や写真の撮影、漫画やアニメの作成、音楽や音源の作成等
  • ● 翻訳・通訳・・・各種言語の翻訳・通訳等
  • ● ビジネス・事務・専門・その他・・・企画、リサーチ、資料作成サポート、コンサルティング等

専門型のサービスも続々と登場していますし、これからも仕事の種類はどんどん増えていきそうです。

「クラウドソーシング」に登録している人はどのような人?

クラウドソーシングを活用している方として、いわゆる「フリーランス」の方が注目されることが多いです。

実際にフリーランスの方の登録が多いようですが、法人の登録も多く見られます。

Webサイトの制作(Webデザイナー、コーダー、ディレクター)やWebシステム構築に欠かせないプログラマー、システムエンジニア等、事業会社で経験を培ってきたかたや、学校に在学中でデザインなどの勉強をしている方、税理士、社会保険労務士、司法書士、行政書士等の資格をお持ちの方、表計算ソフト(エクセル等)やプレゼンテーションソフト(パワーポイント等)の高いスキルをお持ちの方、様々な媒体でライティングの経験があるライター・・・等、多様な人材に巡り会える可能性があります。

具体的な「クラウドソーシング」活用の流れ

それでは実際に、クラウドソーシングのサイトを活用して仕事を行う際の流れを確認してみましょう。

①クラウドソーシングサイトでアカウントを作る

サイトを利用するためにアカウントを作成しましょう。名前、メールアドレス等の基本情報と支払いにクレジットカードを使用する場合は、クレジットカード情報も必要になります。

また「法人向けアカウント」を作れるサイトもあります。一定のまとまった量の発注が想定される場合や、ディレクションの手間をかけたくない、後払い対応にしたい等のニーズがある場合は検討してみるのもよいでしょう。

法人向けアカウントの利用には、月あたりの発注金額が○○円以上、等の条件がある場合が多いので、単発で発注したい場合、まずはお試しで使ってみたい…と考えている場合は、通常のアカウント登録で進めていくのがよいでしょう。

②発注したい仕事を登録する

サイトで仕事依頼をします。クラウドソーサー(案件に対応してくれる人たち)がわかりやすい記載を心がけましょう。

サイトによっては入力の例が示されるので、それを参考にするとよいでしょう。

また、この段階で「エスクロー」と呼ばれる、仮入金を行います。

  • ● 依頼内容のタイトル
  • ● 依頼の詳細
  • ● 参考資料
  • ● 納期関連の情報(依頼締切日、希望納期日)
  • ● 仕事の種類
  • ● 支払に関する情報

上記のような項目を登録します。

内容はより具体的に、出来れば背景や周辺情報も伝わるように記載するとスムーズにやりとりができるでしょう(例えば、急ぎで依頼する場合はその背景を記載する、継続発注を前提にしているので今回はテストマーケティングとして実施したい…等)。

 

【参考】仕事の種類とは?

仕事の進め方によって、募集の形式や支払いの方式が若干変わってきます。以下のような種類があります。

 

プロジェクト方式

まず仕事依頼を行い、クラウドソーサーから納期や金額の見積もりを提示してもらう方式です。クラウドソーサーからの見積り内容やこれまでの実績、スキル、評価等を確認し、発注する人を決定してから仕事開始となります。

Webサイトやアプリの構築、プレゼンテーション資料の作成、翻訳作業、動画編集など、特殊なスキルが要求される仕事で使われることが多い方式です。

プロジェクトの特定の工程をお願いする、というパターンが多いです。

 

コンペ方式/コンテスト方式

仕事依頼を行うと、依頼に対する提案が直接送られてくる方式です。

ロゴ制作などで使われることが多い方式ですが、依頼をするとクラウドソーサーはロゴデザインを作成し、仕事依頼のページにロゴをアップロードします。

発注者(クライアント)は複数の提案の中から気に入ったものを選び、その提案をしてくれたクラウドソーサーに報酬を支払い、ロゴのデータを受取ります。

 

タスク方式

タスク方式はデータ入力やアンケート、短い記事作成などの比較的簡単な作業に対して使われる方式です。

複数のクラウドソーサーが、1つの依頼に対して同時に作業を行うことができます。

スキルを要求しないため報酬も低めになることが多いですが、すきま時間を有効活用したいクラウドソーサーが対応してくれます。

 

アイデア方式

「新規サービス名募集」、「媒体名募集」、「Webサイト改善案募集」など、発注者(クライアント)が出した要件に沿って、アイデアを提出する方式です。

アイデアが選ばれると報酬が支払われます。

③クラウドソーサーを決める、クラウドソーサーとやり取り、クラウドソーサーのディレクション

仕事の種類により、クラウドソーサーの選定とディレクションの順番が前後しますが、いよいよクラウドソーサーとのやり取りを開始します。

スムーズに仕事を進められるように、必要な情報は正確に提供し、可能な限りタイムリーに対応するようにしましょう。

会社の営業日や業務の都合で連絡を取りにくい日程や時間帯がある場合は、事前に共有しておくとよいでしょう。

④納品確認

クラウドソーサーから仕事の完了報告が届いたら、納品物をしっかりと確認しましょう。

ここで手を抜くと後々のトラブルの元ですので、細かい点までしっかり検証します。

納品物に問題がなければ、正式に仕事完了とし、サイト上での手続きを滞りなく進めていきましょう。

⑤入金

仕事依頼時に仮入金(エスクロー)していた報酬を正式に入金します。

スムーズに対応するよう心がけましょう。

⑥事後対応(評価する等)

サイトにより形式は様々ですが、クラウドソーサーを評価する機能があることが多いです。

対応しない場合も、自動対応で評価が付けられることになりますが、ここはしっかりと入力し、クラウドソーサーへの感謝を伝えましょう。

フリー入力の内容も定型的なものではなく、一言で構いませんので、ご自身の言葉で記載したほうがよいです。

クラウドソーサーとの関係構築にもつながりますし、ここまでしっかり対応できる、ということは、発注者自身が信頼できるクライアントだ、という評価につながり、今後レベルの高い提案をもらえるようになるでしょう。

「クラウドソーシング」のメリット、デメリット

ここでは「発注者側」の立場で、クラウドソーシングのメリット、デメリットをまとめてみます。

メリット

(1)自社のノンコア業務を委託する先を見つけやすい

人や資金等のリソースの制約が大きい中小企業としては、自社のコア業務(売上に繋がる仕事、自社の価値を発揮できる仕事)にリソースを集中させたいところでしょう。

一方で止めることの出来ないノンコア業務(売上に直接的にはつながらない仕事、自社の得意ではない領域の仕事)も、会社には数多く存在するものです。

「本当は外注したいのだけど…」と悩んでいても、外注先を探すこと自体が困難、という状況も多いと思います。突発的に発生した大量の作業への対応に悩まされることもあると思います。

このようなとき、「群衆の知恵」をすぐに活用できるクラウドソーシングのサイトは、強い味方になってくれます。

しかも自社にとってのノンコア業務を「その道のプロ」に依頼することで、“上質な仕事”を実現することができます。

 
(2)ノンコア業務を委託することで空いたリソースを、コア業務にあてられる

ノンコア業務を外注したい、そもそもの理由と重なりますが、ノンコア業務を外注することで自社の貴重なリソース(人、資金、時間等)をコア業務に投資できます。

コア業務へ投資することで、売上拡大につなげることができ、会社の成長促進につながります。

 
(3)経費節約

クラウドソーシングを使って、プロに仕事を依頼すると、自社でその業務を行う場合にかかってしまう人件費(作業員の人件費、管理者の人件費)が不要となります。

また、一般的に法人格の会社に依頼するよりも、クラウドソーシングを活用したほうが10~50%ほど、発注金額を抑えることができる、と言われています。

 
(4)人材の発掘に繋がる

中小企業の大きな悩みのひとつとして「人材(採用、育成)」に関するものがあります。

クラウドソーシングの活用はインターネットの特徴を活用しての、優秀な人材発掘につながるでしょう。

メディアでも紹介されることがありますが、都心から遠い場所や海外在住のクラウドソーサーも数多く活躍しています。仕事をするうえで、場所の制約が大きかった時からすると、考えられない状況でしょう。

デメリット

(1)セキュリティの確保

発注者(クライアント)は自社の情報を少なからず外に提示することになるため、機密情報が洩れてしまう可能性があります。また、顧客情報を扱う業務を依頼する場合は個人情報の取り扱いについても、慎重な対処を行わなければなりません。

セキュリティの確保に不安が残る場合は、内製化する、という判断も時には必要でしょう。

 
(2)発注先(クラウドソーサー)の見極め

これはクラウドソーシングのみの課題ではないかもしれませんが、顔が見えない状態で取引を開始するクラウドソーシングだと、対面での取引よりも不安が大きくなってしまうのではないでしょうか。

途中で音信不通にならないか、締切どおり対応してもらえるのか、自己紹介の内容は本当?…と、気にしだすとキリがありません。

トラブル回避のためにも、依頼文に記載する内容を工夫したり、評価や過去実績、ポートフォリオ等を参考にしたりするなど、発注者側にも工夫が必要でしょう。

※音信不通になった場合は、サイトによっては運営者が対応してくれる場合もあります

クラウドソーサーとの信頼構築のために

前項でクラウドソーシングのメリットとデメリットを見てきましたが、特に柔軟に素早く新しい試みを進めたいベンチャー企業やスタートアップ期で経費を節約したい、と考える企業にとってはメリットのほうが大きいのではないか、と思われます。

クラウドソーシングを効果的に活用するには様々なポイントがありますが、なんといっても鍵になるのは「良いクラウドソーサーに出会えるか」ということでしょう。

そのためには自身も「良いクライアント(発注者)」であるべきですし、信頼関係を構築していくために気持ち良く仕事を出来る工夫をしていかねばなりません。

最後に、私自身がクラウドソーサーとの信頼関係構築のために心がけていることを紹介して終わりにしたいと思います。

情報の出し惜しみはしない

経済学の用語で「情報の非対称性」という言葉がありますが、クラウドソーシングではこの状況が発生しやすいのではないかと思います。

情報を出し惜しみすると、クラウドソーサー側は仕事がしにくくなり不利益を被りますし、発注者側も結果として希望通りの成果物を得られず、不幸になってしまいます。

情報の機密性に注意する、自社のコア情報を出さないなどの配慮は必要ですが、必要な情報は正確に共有しあうようにしましょう。

返答は出来る限り素早く

クラウドソーシングの運営会社が優秀なクラウドソーサーを認定する、という制度がありますが、その判断基準の一つに「24時間以内の返答率」というような項目があります。

それだけ素早い返答というものは安心感を与えるものですし、顔が見えないインターネット上の取引である以上、お互いに不安を与えない連絡体制の確立が安心したプロジェクト運営の必須要素になります。

評価機能はしっかり活用する

飲食店を探す際に、食べログやぐるナビの口コミを参考にする人も多いでしょう。

それと同じ役割がクラウドソーシングサービスの評価機能にあります。初めて依頼するときや新しい領域の仕事を依頼するとき、実績とともに「本当にこの人は仕事を完遂してくれる人なのか?」ということを判断したいと思います。その時にこの評価機能が役に立ちます。

また良い仕事をしてくれたクラウドソーサーに感謝の気持ちをしっかり伝えることもできます。

初回はお互いにリスクを取ってテスト

初回の取引を不安に思うのは発注者もクラウドソーサーも同じです。また、最初から滞りない理想的な取引ができることも稀でしょう。

そのような事情を理解し、初回はお互いにリスクを取ってテストの位置づけでやりとりするのもひとつです。

いきなり案件依頼ではなく事前のネゴを

これは既に取引があるクラウドソーサーとのやり取りの際の注意点ですが、新たな依頼をしたい場合にはいきなり案件を登録するのではなく、事前に対応が可能か?可能であればどのようなスケジュールになるか?…といったことを交渉しておくとスムーズでしょう(サイトにはメッセージ機能があります)。

譲れるポイントと譲れないポイントを明確に

クラウドソーシングに限らず、仕事を委託するうえで実現したい要件はたくさんあると思います。

その中でも優先順位をつけておくと、クラウドソーサーともやり取りがしやすいでしょう。例えば費用、スケジュール、分量、品質等、何を最優先で進めたいのか、整理をしたうえで依頼をするようにしましょう。

自分の発注価格は妥当なのか見直しを

クラウドソーシングを活用するメリットのひとつに、法人格の会社に依頼するより費用を抑えられる、ということがあるのですが、あまりにも安い発注金額で無理な依頼をすることは絶対にNGです。

適正な価格で発注するからこそ、適正な納品物が出てくるのだ、と思います。

感謝はオーバーなくらいに伝えましょう

顔が見えにくい取引だからこそ、オーバーなくらい感謝の気持ちは伝えましょう。

お互いに感謝が出来る関係性を築けると、きっと困ったときに心強いパートナーとなってくれるでしょう。そしてそのような関係性が、また新しい素晴らしいクラウドソーサーとの出会いを招いてくれるでしょう。

「そんなのビジネスマンだったら当然だよ!」というポイントばかりかもしれませんが、ほとんどがウェブ上で完結してしまう取引。

あらぬ誤解を生まないためにも、上記の点には気をつけすぎているくらい気を付けたいものです。

おまけ

少し古いですが、クラウドソーシングについては2014年版の中小企業白書にも詳しく取り上げられています。

執筆者

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