経営者に限らず、日々真剣に仕事に打ち込む方にとって、健康は何物にも代えがたい大切なものでしょう。一方でまだまだ気力、体力ともに充実しており、病気・病院とは無縁、と感じていらっしゃるかたも多いかもしれません。
しかし、いざという時のために備えて、日ごろから身体をメンテナンスしておくことは非常に重要です。
さて、平成28年度税制改正で、「スイッチOTC薬控除」と呼ばれる医療費控除の特例が創設されました。健康の維持増進や病気の予防への取組みとして創設されたもので、今までの医療費控除とは違った要件で医療費控除が認められます。
「病院にはほとんど行かないから、医療費控除は関係ない」と思われている方もいらっしゃるかもしれませんが、この制度は上手く活用すれば、皆さんの健康維持にも繋がります。制度の要点を押さえてみましょう。
スイッチOTC医薬品に対する医療費控除の特例とは
平成28年度度の税制改正で、「セルフメディケーション推進のためのスイッチOTC薬控除」といわれる医療費控除の特例制度が新設されました。
スイッチOTC医薬品とは?
スイッチOTC医薬品とは、医療薬でのみ使用が認められている成分の中で、市販薬に使用することを認められた成分を使用している医薬品のことをいいます。
使用実績や安全性から医療用医薬品の代替として、市販薬として販売しても良いと認められたものですが、従来の市販薬より効果が高いものが多いのです。購入するときにも、処方箋なしで買うことができる便利な医薬品です。
セルフメディケーション税制の対象品目については、6月17日に公表されました。
※参考リンク:セルフメディケーション税制対象品目(6月17日時点)の公表について
対象品目は必要に応じて2ヶ月に1回更新されるそうです。
※参考リンク:厚生労働省 セルフメディケーション税制(医療費控除の特例)について
対象者
スイッチOTC薬控除は誰でも適用されるわけではなく、特定健康診査(いわゆるメタボ健診)、予防接種、定期健康診断(事業主健診)、健康診査、がん検診のいずれかを受けている人が対象になります。
適用期間
スイッチOTC薬控除は、平成29年1月1日~平成33年12月31日までの間のみの期間限定制度です。
つまり、はじめて適用されるのは、29年1月1日~12月31日までの確定申告を30年3月15日までに行うときです。
所得控除できる額
スイッチOTC医薬品を購入するための支払いが年間1.2万円を超た場合に、その購入費用のうち1.2万円を超えた額について所得控除できます。また、8万8千円を超える場合には、8万8千円までしか控除をすることができません。
つまり、スイッチOTC医薬品を10万円以上購入しても、それ以上は控除できる額が同じになってしまいます。
従来の医療費控除制度とは併用できない
スイッチOTC医薬品に対する医療費控除の特例制度と従来の医療費控除制度は、どちらか一方しか適用を受けることができませんので、どちらか有利なほうを利用するとよいでしょう。
まとめ
医療費の内容や金額によって、スイッチOTC薬控除か従来の医療費控除のどちらか有利なほうを利用するとよいので、確定申告を行う際には、信頼できる税理士に相談し、どちらの制度を利用するのかを決めると良いと思います。
スイッチOTC薬を含めた医療費の領収証は、きちんと保管しておくようにしましょう。また、スイッチOTC薬控除を受ける場合には、領収書のほかに特定健康診査などを行ったことを明らかにする書類も必要です。