ひとくちに「会社」と言っても、実は日本には4種類の会社があります。
会社の目的や目指す方向性、役員構成など、それぞれの会社の状況に応じて、どの形態の法人にするのかを決めていきましょう。
会社の種類
「会社」には以下の4つの種類があります。
- ● 株式会社
- ● 合同会社
- ● 合名会社
- ● 合資会社
合同会社、合名会社、合資会社を総称して「持分会社(もちぶんがいしゃ)」と呼びます。
持分会社には次のような特徴があります。
- ● 所有と経営の一致:持分会社の社員は、原則として業務執行権限を有します(会社法590条第1項)
- ● 退社の自由:持分会社の社員は、任意に退社することができます(会社法606条第1項)。一方で持分の譲渡は厳しく制限されています(会社法585条第1項)。持分会社が社員相互の信頼関係に立脚して運営されている、ということを前提にしているため、誰が社員であるのか、ということは他の社員にとっても重要な利害事項になるためです。
- ● 意思決定の方法:持分会社の意思決定は、原則として総社員の同意で行います(会社法637条)
出資者の責任の範囲
出資者が負う責任の種類には「無限責任」と「有限責任」があります。
無限責任社員は、会社の債務に関して連帯して無限の責任を負う社員のことです(会社法580条第1項)。無限責任社員には出資の目的として、金銭のほか、現物や労務による出資が認められています。
一方、有限責任社員は、会社の債務に関して、出資額を限度として責任を負う社員のことです(会社法580条第2項)。会社財産の充実のため、有限会社の出資の目的は金銭等でなければならないとされています(会社法576条第6項)。
出資者が無限責任の会社
- ● 合名会社・・・合名会社は全ての社員(=出資者)が、会社の債権者に対して直接責任を負う「無限責任社員」です。
- ● 合資会社・・・合資会社には「無限責任社員」と「直接有限責任社員」の両方の社員が存在します。「直接有限責任社員」は予め決められた出資額の限度で、債権者に対して連帯して責任を負います。
出資者が有限責任の会社
- ● 株式会社・・・「有限責任社員」で構成されます。株式会社は出資割合に応じて、株主総会での議決権割合が決まります。
- ● 合同会社・・・「有限責任社員」で構成されます。合同会社は出資割合に関係なく、総社員の同意をもって意思決定を行います。
無限責任は避けたほうがよい
会社設立や法人成り(個人事業を法人の形態にする)のメリットのひとつとして、個人のもとから事業リスクを分離できる、ということが挙げられます。
このメリットを享受するには、有限責任社員のみで構成される「株式会社」もしくは「合同会社」を選択するのがよいでしょう。
株式会社のポイント
合同会社と比較しての株式会社のポイントとして、以下のような点が挙げられます。
日本では認知度が高く、客観的なイメージも良い
日本で設立される法人では株式会社の数が多く、一般的な認知度も高いです。
将来会社を大きくしたい場合、新たな出資者を募りやすい
新たな出資者を募る場合、出資者全員の承認までは不要とすることができます。将来、会社を大きくしたい場合は、株式会社の形態が望ましいでしょう。
配当を行う場合は、出資割合に応じて配当金を支払う
株式会社が配当を行う場合は、出資割合に応じて配当金を支払います。
例えば「1株あたり100円配当する」場合には、10株持つ人には1,000円の配当金が、300株持つ人には30,000円の配当金が支払われます。
設立時に定款認証が必要であり、登録免許税が合同会社よりも高い
株式会社を設立する際には、公証人による定款認証が必要です。50,000円の費用がかかります。
また登録免許税も150,000円かかり。合同会社の60,000円より高いです。
決算公告が必要
株式会社には決算公告をして、会社の決算書を公表する義務があります。
事業年度終了後の決算で作成した貸借対照表を株主総会で承認した後に、官報や日刊新聞紙、自社のWebサイトに掲載します。公告の方法は定款に定めることができます。
合同会社のポイント
海外では「LLC」として認知度も高い
日本では認知度の点で株式会社に劣ってしまう合同会社ですが、海外では広く「LLC」として認知されています。
実際に外国会社の日本法人が合同会社の形態で法人を設立することも多いです。
配当は出資割合に関係なく行われる
合同会社が配当を行う場合は、出資の割合とは関係なく利益配分を設定することができます。総社員の同意が必要です。
設立時の定款認証が不要、登録免許税が株式会社よりも安い
合同会社を設立する際には、公証人による定款認証が不要です。
また登録免許税も60,000円と株式会社の150,000円と比べて、90,000円安くなっています。
設立費用はトータルで約140,000円抑えることができます。
決算公告が不要
合同会社は決算公告が不要です。
迷ったら、株式会社を選択する
以上のポイントを踏まえると、法人の形態に迷った場合は「株式会社」を選択することをおすすめします。
日本の法人の多くが「株式会社」であり、一般的にも認知度が高く、将来、会社の拡大を志向している場合、新たな出資者を募りやすいというメリットもあります。
おまけ~合同会社の例
株式会社と比べると地味な印象がある合同会社ですが、「実はあの有名企業が合同会社!」という例も数多く見られます。
下記はその一例です。
- ● 合同会社西友
- ● Apple Japan合同会社
- ● ユニバーサル ミュージック合同会社
- ● P&Gマックスファクター合同会社
- ● アッヴィ合同会社
- ● 日本ケロッグ合同会社
- ● コダック合同会社
- ● シスコシステムズ合同会社