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非課税枠が10万円→15万円に!通勤手当の非課税限度枠の改正 財務・会計/2016.06.20

給料にプラスして支給する通勤手当には、税金がかからない(非課税)ということはご存じでしょうか。一定範囲の通勤交通費には所得税がかからないという制度です。

平成28年度の税制改正で、非課税限度枠が100,000円から150,000円に広がりました。通勤手当の非課税部分を広げることによって新幹線通勤等を推進し、東京に集中している人口を地方に分散させようという政府の方針のようです。

今回は、通勤手当の非課税限度額について解説し、会社を経営していくうえで、どのようにこの制度を利用していけばよいのかについて考えてみました。

通勤手当の非課税限度額とは

通常の給与にプラスして支給する通勤手当、つまり交通費は一定の範囲で所得税がかかりません。この非課税となる金額を、非課税限度額といいます。

限度額を設定しているのは、通常必要な交通費よりも多くの交通費を支払っている場合には、その部分は給料であると考えられるからです。

非課税限度額の具体的な例

(1)マイカーや自転車で通勤している場合

マイカーなどで通勤している場合には、片道の通勤経路に沿った長さで金額が決められています。

インターネットのグーグルマップなどで簡単に距離を調べることができますので、交通費支給の申請書に、自宅からの距離と測定方法の記載欄を設けるとよいでしょう。

具体的には以下の金額となります。

2キロメートル未満全額課税

2キロメートル以上10キロメートル未満

4,200円

10キロメートル以上15キロメートル未満

7,100円

15キロメートル以上25キロメートル未満

12,900円

25キロメートル以上35キロメートル未満

18,700円

35キロメートル以上45キロメートル未満

24,400円

45キロメートル以上55キロメートル未満

28,000円
55キロメートル以上31,600円

(2)電車などの交通機関を利用している場合

特に首都圏などの都心に通勤されているかたは、このケースが多いでしょう。

電車などの交通機関や有料道路を利用している場合には、1か月あたりの「合理的な」運賃などの金額になります。

つまり、1か月あたりの定期代や、1日の交通費に出勤日数をかけて計算した金額になります。

この場合の最高限度額は150,000円です。平成28年度の改正ではこの限度額が引き上げられ、今までは100,000円だったものが150,000円になりました。

新幹線を例にとってみましょう。今回の改正により、東京や新大阪、名古屋などのターミナル駅から200km圏内が通勤可能なエリアとなります。

具体的な駅名を挙げてみると

  • ● 東海道新幹線:東京~静岡(133,860円/月) ※改正前は東京~三島間
  • ● 東海道新幹線:静岡~名古屋(136,200円/月)
  • ● 東海道新幹線:名古屋~新大阪(136,640円/月)
  • ● 山陽新幹線:新大阪~岡山(133,860円/月) ※改正前は新大阪~姫路間
  • ● 上越新幹線:東京~越後湯沢(148,870円/月) ※改正前は東京~本庄早稲田間
  • ● 東北新幹線:東京~新白河(142,520円/月) ※改正前は東京~小山間
  • ● 北陸新幹線:東京~上田(144,310円/月) ※改正前は東京~本庄早稲田

上記のような新幹線通勤が非課税限度額の枠内で可能になりました。

(3)マイカーなどと交通機関の両方を利用している場合

(1)と(2)の合計額が限度額になりますが、最高限度額は150,000円です。

処理方法

通勤手当は、通勤手当をもらった側からみると、非課税限度額の範囲内の交通費には所得税が課税されませんが、限度額を超えた金額は給与として扱われて所得税が課税されます。

通勤手当を支払う会社側からみると、給料でも交通費でも会社の費用である点については同じです。

交通費として支給した分については、非課税限度額の範囲内の金額であっても、非課税限度額を超えた部分の金額であっても、消費税を払っている点では同じですので、消費税の課税取引として扱うことができます。

通勤手当の考え方

会社経営上の通勤手当の考え方

経営を行っていく上では、通勤手当の非課税限度額が拡大したとしても、通勤手当を支払わなければならないことにはかわらず、なるべくコストを抑えたいという観点からは、遠距離通勤を推進するのは避けたいところです。なるべく会社の近くから通勤してもらったほうが便利ですので、会社の近くからの通勤を推奨している会社も多いようです。

有名なところだと、株式会社サイバーエージェントは「2駅ルール・どこでもルール」という家賃補助制度を運用しています。勤務しているオフィスの最寄駅から各線2駅圏内に住んでいる正社員に対し家賃補助を支給する、という制度です。

どのように通勤手当の非課税限度額の制度を利用していけばよいか

会社にとっては、遠距離に住んでいるけれどもどうしても採用したい優秀な人材を採用できる可能性が高まるかもしれません。今までは遠距離で必要な交通費を支払うと、非課税限度額の範囲を超えてしまうことで所得税がかかり、優秀な人材が会社に就職してくれなかった、という場合には、今回の税制改正は有利な制度です。

しかし、会社にとって多くのコストがかかることにはかわりませんし、遠距離通勤は通勤時間も多くかかってしまいます。

そもそも今回の制度改正の目的に立ち返ってみると、東京一極集中を緩和し地方への移住を推進する、という点があります。

そういう点から考えると遠距離通勤を可能にする、ということ以外にも、地方に在住しながらも仕事が可能になるように、クラウドサービスを活用した業務の仕組みを充実させるなどの方法を模索していくことを考えていくのがよいかもしれませんね。

いずれにせよどこに住んで、どこで働き、どのような通勤手段を使うのかは、各人が決めることです。各人の価値観や考え方にあった働き方、それでいてかつ生産性の高い働き方が実現される社会を、構築していくべきなのではないでしょうか。

通勤手当の非課税限度額・まとめ

今回は、税法上・会計上の通勤手当の非課税限度額についてまとめ、平成28年度の税制改正で行われた通勤手当の非課税限度額の拡大について考えてみました。

通勤手当の非課税限度額については、従業員などの所得税の観点からは非課税ですが、法人税の観点からは損金になりますし、消費税も課税取引として処理できます。また、社会保険料の計算上は給与に含めなければならず、それぞれの観点から処理が異なり複雑です。

そして「会社経営」という視点に立つと、会計・税務のことのみならず、クラウドサービスを活用するなど生産性の高い業務環境の構築、ということも考えていかねばなりません。

実際に会社経営を行う上ですべてを考えていくのは大変ですので、社会保険にも強い税理士法人や、信頼できる税理士に相談されながら処理をしていくのがよいのではないでしょうか。そしてその際に、各種クラウドサービスやIT技術の活用も視野に入れて、業務の効率化も同時に進めていくのがのぞましいでしょう。

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